自分がストレスをため込まずうまく処理するためのセルフケア技法を中心にお伝えしておりますが、
今回は講座④で紹介した「ストローク」のように他者への働きかける時の工夫の一つ、「アクティブリスニング(積極的傾聴法)」について紹介します。
世間では「相手の立場にたって話を聴くべし」ということがよく言われます。
ところが人はそれぞれ自分の価値観を持って、それを拠り所として生きているものです。
同じ社会・文化で生きていても価値観は多様になってしかるべきです。
ということは、「相手の立場にたつ」という行為は極めて難しいということが言えます。
そもそも「相手の立場に立つ」とはどういうことなのでしょうか。
この時に大事になるのはカール・ロジャーズという臨床心理学者が提唱した「共感的理解」という概念です。
「共感的理解」とは「相手のことをあたかも自分自身のことのように感じること」です。
「あたかも」というのがポイントで、完全に相手の立場に立つということは本質的には無理だとしても、
相手に「まるで自分の立場になっているかのように考えてくれている」と感じてもらうことは不可能ではありません。
そんなふうに相手に感じてもらえるようにするための技術が「アクティブリスニング(積極的傾聴)」と呼ばれる手法です。
ただ人の話を聴くというのは簡単かもしれませんが、
それを相手にポジティブに受け止めてもらえるように聞くというのはある程度技術が要求される営みであるということを前提として理解しておく必要があります。
アクティブリスニングの要点は以下の6点です。
1.単純に受容する(自分の解釈を挟まない)
具体的にはあいづちを打ちながら話を聞き、表情やうなずき目線など非言語的な要素にも注意を払いながら聞く
2.相手の言葉を単純に繰り返す
例)「昨日恋人と喧嘩したんですよ」→「恋人と喧嘩されたのですね…」
3.相手の感情を単純に繰り返す
例)「喧嘩をした後悲しくて泣いてしまったんです」→「悲しくて涙が出てきてしまったんですね」
4.質問をする
相手があまり多くを語れない時は「閉じられた質問(Yes/Noで回答可)」を。
相手に多くのことを話してもらう時は「開かれた質問(自由回答)」を。
5.明確化
「それは〇〇ということですか」
6.要約
「~という経験についてお話下さったんですね。」
アクティブリスニングの大事なところは、こちらが教科書的な正解を導こうとしないというところです。あくまでもこちら側が優秀なる聞き手に徹するということ。
種々のテクニックにより相手の言いたい事や感情がうまく引き出されれば目的達成で、流れに乗れば後は相手自らうまくストレスマネジメントをし始めていくはずです。
要するに「私はあなたの話を真剣に聞いていますよ」というメッセージを丁寧に伝えること。それがアクティブリスニングということだと思います。
たがしゅう