ストレスマネジメント講座⑧ 望ましくないコーピング

前回、様々なストレスへの意図的対処「コーピング」について説明しましたが、

実はコーピングの中には望ましくないものもあります。

大きくは二つあって、「①やりすぎるとよくないコーピング」「②やってはいけないコーピング」です。

「①やりすぎるとよくないコーピング」とは一言で言えば「依存症的対処」のことです。

ストレスを感じた場合に、ゲームやギャンブル、アルコール、ショッピングなどの行動によって気晴らしをするという対処です。

これを一時的利用にとどめるのであればよいのですが、それぞれの行動自体に依存してしまう要素があります。

当初はストレス発散のために行っていた行為が、その快感からいつの間にか慢性的に繰り返されてしまい、

気が付けばストレス発散のためというよりも快感のため、ひいては依存症の状態に陥って止めると離脱症状によって苦しんでしまうのを防ぐためにコーピングを行い続けるという本末転倒な事態へと陥りかねません。

これは「ストレス解消のために甘いもの(糖質)を摂取する行動」にも通じるものがあります。

糖質摂取は人為的なストレス反応トリガーという側面があるので、実際ストレスが和らぐ感覚は得られるのですが、

これが慢性的に繰り返されると中毒となり、いくら理詰めで説明しても糖質が止められない状態へとこじらせてしまうため注意が必要です。

もう一つの「②やってはいけないコーピング」「傷つけ対処」と呼ばれる行動です。

例えば、人をなぐったり、自分を傷つけたり、壊してはいけないものを壊す行動などを指します。

これを行うと様々な意味での秩序が保たなくなるため、それにより自分の心がうまくコーピングできたとしても、今度は秩序が乱れたことによって新たなストレスが生み出され、結局またその新たな問題に対してコーピングを行う必要性が出てくるので本質的な意味で解決には至りません。

医療行為で言えば、この傷つけ対処は「手術」に通じるものがあると私は思います。

手術とは、根本は解決していないのに目の前にあるストレス源を除去することで当座のストレスを解消しようとする行為とも言えます。

しかしその結果残るのは臓器を欠損した身体です。全てが一体化されて秩序を保っていた人体にひずみを生じ、それまでには無かった代謝の乱れ、機能の低下、それを補うための他の臓器の過活動など、

結局は新たなストレスを生み出すことへとつながり、多くの場合手術は繰り返されることへとつながり、なおかつ決して根本解決されない状況が続くことになってしまうのです。

そう考えると適切なコーピングとは、

1.今自分の中にあるものから始めること
2.なるべく外のものに頼らず、内のものを整える発想を持つこと。どうしても外のものを用いる場合でも一時的に留めておくこと

というのがコツになるのではないかと私は思いました。

たがしゅう