保険診療を始めるにあたっての私の思い

私は以前よりオンライン診療を保険診療では行わない方針を表明しておりましたが、

色々と悩んだ末に、この度2021年6月1日から当クリニックで保険診療を行うことができるように致しました。

なぜそのように方針転換したかと言いますと、オンライン診療の初診解禁を示したコロナ時限措置が1年以上の期間にわたるようになり、

収束の目処もたたない中で、現在の時限措置下におけるオンライン診療であれば、保険医療制度内の厳しすぎる制限の悪影響を受けなくて済み、

患者さんにとって必要な医療を提供するための選択肢を増やすことができるようになると考えたためです。

ただ日本の医療保険制度の中では、保険診療と自由診療(保険外診療)を併用する混合診療は原則として認められていません。

実はこれは健康保険法上に直接規定した条文があるわけではないのですが、いわゆる暗黙のルールとして医療界では広く知られています。

なぜ混合診療が禁止されているのかと言いますと、厚生労働省の見解としては「医療保険で認められた正当な医療を正当に広めるため」と、「患者側の不当な負担増を避けるため」ということのようです。

 

ですので、当クリニックにおいて保険診療と自由診療の受診枠は明確に分けておくとともに、

ここで私が「保険診療」と「自由診療」をそれぞれどのような診療に位置づけるかという個人的な見解をお伝えしておこうと思います。

あくまでも私個人の考えですので、患者さんに強要するものでは決してありません。これから述べる考えはあくまでも参考にとどめ、患者さんにはそれぞれの診療枠を効果的に利用してもらえればと思います。

 

まず一言で言えば、「保険診療」は「とりあえずの対処を行う医療」、「自由診療」は「根本的な病気からの卒業を目指す医療」だというのが私の考えです。

もっと端的に言えば、薬(保険薬)が欲しい患者さんには「保険診療」を利用してもらえればと思います。

保険薬についての私の考えは1stブログの方で一度語ったことがありますが、私は薬を飲む行為は病気を治す行為だとは考えていないんですね。

病気は治せないけれど、とりあえず今の状態を何とか整えるというのが薬がやっていることだと思っています。

なぜならば「病気とは患者さん自身の反映」であり、病気を根本的に治すということは「患者さん自身が変わる」という行為が必要不可欠であるからです。

今までも「自由診療」によるオンライン診療で私は、そうした理念の下に患者さんが変われるように最大限のサポートを行って参りました。

しかしながら私がどのようにアドバイスしたとしても、変わることができない患者さんがいるのも事実です。

私の実力不足もあってのことでしょう。しかし現状何が原因であろうと、そうした患者さんに私はメリットを提供できていないというれっきとした事実がある以上、私は立ち位置を見直さないといけないと思いました。

なので、何らかの事情で自分を変えることができない人には、変わらなくてもいいからせめて今の状態をできるだけ整えるという目的で薬(保険薬)を使用するという選択肢として「保険診療」枠を受け止めることにします。

私の嫌いな薬漬け医療に寄与することにつながってしまう可能性は否定できませんが、それは保険医療制度自体の罪ではありません。あくまでも患者さんと私のやり取りの中で生まれた結果でしかないと思います。

 

それにとりあえずであったとしても、薬による治療で整っている間に、患者さん自身が変わる大きなきっかけが生まれる可能性だってゼロではありません。

なので「患者さんに根本的に病気から卒業してもらう」という大きなビジョンは忘れないようにしながら、

患者さんの状態に応じて臨機応変に保険薬を使いつつ、機があれば病気を克服するための行動変容を促せるように、

これからのオンライン診療の質を高めていこうと思います。

 

たがしゅう