自由診療専門のオンライン診療に戻してみた

熟慮の末に2年間ほど続けてきた保険診療を止めて、
2023年6月1日より開院当初と同様の完全自由診療でのオンライン診療に戻しました。

「振り出しに戻る」的に思われてしまうかもしれませんが、
この経験のおかげで私としては保険診療の闇の部分がよく見えましたし、
自分が自由診療のオンライン診療で何を提供するかという考えが整理できました。

言い換えれば、保険診療の中で一般的に行われるオンライン診療と、
私が提供する自由診療でのオンライン診療とは、一体何が違うのかについて
自分なりに整理することができたように思います。

今回は私が提供する自由診療でのオンライン診療は
どんな医療を提供するかについて、現時点での私の考えをまとめておこうと思います。

一言で言えば保険診療でのオンライン診療は
受動的医療の視点でのオンライン診療
自由診療でのオンライン診療は
主体的医療の視点でのオンライン診療」です。

具体的には以下に示します。

【①患者が治療に迷った時のセカンドオピニオン】

まず一般的な保険診療の世界でもセカンドオピニオンが求められる場面はありますね。
そのセカンドオピニオン自体は自由診療なのですが、
話がややこしくなるのでそこは一旦脇におきましょう。
ここではとりあえず保険診療の流れで発生したセカンドオピニオンとして
理解してもらえればと思います。

保険診療でのセカンドオピニオンは、
基本的に治療の絶対的な正解があるという概念の下に行われます。
しかし患者が治療に納得できないとか、
治療に多大な犠牲を払うという説明を受けるなどで、
他に正解の治療法があるのではないかと患者が思った時に
セカンドオピニオンのニーズが発生します。
ただ保険診療からつながって
通常どんなセカンドオピニオンが行われているかと言えば、
保険診療制度の中でよしとされている治療選択肢の中から、
同じ価値観(保険診療が最善だ)を持つ別の医師によって、
保険診療の中での治療の妥当性が検討される作業です。
多少の治療方針の違いがあったとしても、
所詮は保険診療の中での違いなので、
その違いは五十歩百歩だと私には思えています。

それに対して私の自由診療でのセカンドオピニオンは、
その病気に対して自分(患者)自身にできることがあるのかについて
患者と一緒に検討して意見を述べるようなセカンドオピニオンです。
私はどんな病状であっても、
「自分(患者)にできることは何もない」という事態は
あり得ないのではないかと個人的には思っています。
もっと言えば、自分にできることはたくさんある状況であっても
「まな板の上の鯉」などの表現で自分にできることを放棄している人が
非常に多いように感じています。

だから私のセカンドオピニオンは「誰かに治してほしい」とか
「誰かにこの苦しみを取り除いてほしい」とだけ考えている人には
あまり価値を提供することができないかもしれません。
「自分でどうすべきかわからなくなった」という人に対して、
一緒に寄り添ってどうしたらいいか、
私が知っている知識を出し尽くして一緒に考えるセカンドオピニオンです。
ただ誤解のないように言っておきますと、
「誰かに治してほしい」と思ってはいけないというわけではありません。
そういう部分もあってもいいけれど、
そういう部分だけしかない状態で来られても、
きっと私は「あなたにとっては標準治療に任せるのが一番いいと思います」
としか言うことができないだろうということです。

【②症状が自力でコントロールできない場合の一時的な救済策の提案】

保険診療だと自分でコントロールできない症状があると、
ほとんどの場合、何らかの薬をずっと飲み続けるコースへ導かれると思います。
それは根本的な対策を行なっていないが故の
必然的な結末だと私は考えています。

その構造は保険診療のオンライン診療になっても基本的に同じです。
対面診療と違うのはろくに診察せずに薬を出せてしまうということです。
コロナ禍で少ないながら普及した保険診療でのオンライン診療は、
事実上、電話で患者に調子を確認して変わりなければ同じ薬を郵送するという
いわゆる「電話等再診」の枠組みで行われるような診療で、
リアルタイムのビデオ通話を前提とするオンライン診療とは、
到底言えないような質の低いオンライン診療が実際的に多いように思います。

裏を返せばだからこそ日本医師会などは保険診療でのオンライン診療は、
危険だから「対面診療の補完的役割」にとどめるべきだと主張しているとも言えます。
日本医師会のみならず、保険診療を当たり前で疑うことのない多くの医師にとって、
オンライン診療はそのようなものだという認識なのではないかと思います。

それに対して私の自由診療でのオンライン診療は、
どうしても自力でコントロールできない症状の存在は認めますし、
上述のようにそれに対して「誰かに治してほしい」
という気持ちを持つことはあっていいと考えます。

ただし私の場合はオンライン診療で処方判断可能な漢方薬が中心となること、
私の方から薬を漫然と処方し続けることはせず、
あくまでも患者が薬を希望し受診した時だけ薬を処方するということ、
同時並行でなぜその症状が出ているのか、
どうして自力でコントロールできない状況に陥っているのかについて
患者と対話的にコミュニケーションしながら一緒に考えるという点で違います。

これによって私は漫然と薬を出し続ける状況から脱しようと
可能な限りの努力を提供しているとも言っていいのではないかと思います。

【③保険診療が対応できないこと・相手にしてもらえないことへの駆け込み寺的対応】

基本的に保険診療では保険診療以外の医療をまがいものだと考える風潮があります。
例えば私が扱っているホメオパシーは非科学的なまやかしと扱います。
他にも鍼灸治療など軽視する兆候があります。鍼灸に必要な書類の作成を拒む医師も多いと聞きます。
最近だとワクチン後遺症を診療しようとしないというのも広い意味で保険診療以外のものをまがいものだと認識する流れにあると言えます。
その結果、保険診療以外のものを拒絶・全否定する傾向が保険診療にはあります。

一方で私はすべての医療を扱っているわけではありませんが、
基本的に患者さんが求めるどんな医療も全否定はしません。
たまたまホメオパシーに関しては自分も学ぶ機会がありましたが、
それが私が学んでいないものであっても基本的に全否定しません。
その上で私がわかることや、私がわかっていることに基づく
私の意見を患者さんに伝えようとします。
それが正解だというつもりは毛頭ありません。
その上でどうするかは患者さんに決めてもらいますし、
その患者さんの決断を私は可能な限り支援します。
もし私がサポートできない治療法を選ばれたとしたら、
その治療法を提供できる場へ紹介するという形で私は支援します。

他の病院で断られたという書類も、私が書けるものであれば書きますし、
書けないという判断に至れば「申し訳ないですが私には書けません」と伝えます。

そんな風に保険診療でカバーしきれない人や弾かれてしまった人の、
もう一つの選択肢として自由診療でのオンライン診療を提供したいと思っています。

大きくはこの3つというところでしょうか。
他にも役割はあるかもしれませんが、保険診療を経験したことで、
この3点が私のオンライン診療の役割であることが明確になりました。
自由診療のオンライン診療という形式で社会貢献ができればと思います。

たがしゅう