高齢者になっても保険医療制度を使わない生き方

オンライン診療専門のクリニックを立ち上げて、
約1年半の時期に悩んだ末に保険医療制度を取り入れることにしましたが、やはり私の中でこの制度への疑問が大きくなってきました。

年を取らない人は誰もいないので、
自分も含めた社会への忠告・提言の意味を込めて
主に高齢者にまつわる保険医療制度についての所感を述べてみようと思います。

保険医療制度の中の自己負担額の基本は3割ですが、
その自己負担額が高齢者になれば年金を含む収入額にもよりますが、2割や1割へと減額される仕組みとなっています。

そして残りの8割、9割のお金は保険料から賄われます。
要するに現役世代が国民全員のために積み立てたお金です。

一方で高齢化すれば病気が1つや2つではなく重なっていく傾向があります。
それぞれの症状に対して病院を受診すればするほど、何らかの病名が付与されて、その病名に応じて多くの場合薬が追加されることになります。

病名に対して薬が追加されないことは稀です。
なぜならば保険医療制度の下、多くの患者が病院へ通院し、
その多くの患者を効率的に対処するためには投薬という方法以上に効果的な方法はないからです。

そしてその多くの患者の中で大部分を占めるのが高齢者であり、
高齢者であればあるほど薬の数が増えていくという構造になっています。
なぜ薬の数が増えることを防げないのかと言えば、
病名をつけて投薬を行うということを基本におく
保険医療制度の影響が大きいと私は考えています。

というのも病院を受診する高齢者を見ていればよくわかりますが、
ほとんどの高齢者は治療の全てを「先生(医師)にお任せ」します。
医師はお任せされるとどうするかと言いますと、
保険医療制度の仕組みに則って、病名をつけて投薬をします。

そして高齢者の方の多くは、一つひとつの症状に対して、
別の病院を受診した方がいいという意識も働いています。
例えば血圧については内科、膝の痛みについては整形外科、
目のかすみには眼科、おしっこのトラブルには泌尿器科、という感じで。

そうやってそれぞれの症状にそれぞれの病名をつけて、
薬の数を増やしていけば行くほど健康になっていくのかと言えば、
決してそんなことはなく、その場しのぎを続けているだけに過ぎず、
しかも薬の数が増えれば増えるほど予想困難な副作用にも徐々に見舞われるようになり、
それを本人は老化と捉えつつ、薬をもらうための投薬を延々と続けるコースを歩み続けることになります。

今の高齢者医療を眺めていると、はっきり言ってそんな人だらけです。

こう言うと私が現代医療全体を否定しているように聞こえるかもしれませんが、
私は救急医療の意義は歴然としてあると思っています。
けれど緊急性の高くない慢性期の問題に対して、
医師にお任せして、とりあえずの投薬を漫然と続ける態度はあまりよろしいとは思いません。

一方でそのことが高齢者だけに責任があるとも思っていません。
そういう高齢者の流れを進めることに保険医療制度の仕組みが一役買ったことも見逃せない事実でしょう。

ただ、そうやって何も考えずに医師に任せ続けることによって、何が起こるのかをちょっと想像してみてほしいのです。
本当は医師に任せずに自分で整えることで対処できていたかもしれないことに(高齢者集団全体で考えると)多額の保険料が使われることになります。
そのお金があれば若い世代の命を救ったり、生活に困窮する人達を守ったり、社会の仕組みのせいで虐げられている人達を助けたり、国全体を幸福にすることができていたかもしれないのに、
自分のとりあえずの問題対処にそのお金が漫然と使われ続けてしまうばかりか、自分そのものをゆでガエル理論的に不幸にしてしまっている可能性が高いように私には思えます。

一度考えてみましょう。
保険医療で安くて済むからと、とりあえずの対処を続けていていいのかと。
「お医者さんに任せていればきっと良い方向に導いてくれるだろう」と医師に任せていても、まず間違いなく軌道修正はかかりません。
なぜならばそのまま薬を出し続けることが医師にとっては一番楽ですし、
時間をかけてどうすれば症状を整えていくことができるかを考えたとしても医師側に特別の報酬は支払われない(その時間を薬を処方していた方がよほど利益になる)という仕組みに保険医療制度がなっているからです。

もしもよければ、自分の身体のちょっとしたトラブルには保険医療を使わずに自費診療(自由診療)を使うという選択肢も考えてみましょう。
その選択によって保険料が無駄に使われずに済み、他の有用な用途にお金が使われる可能性が出てきます。

さらに言えば、保険医療で安く済む時よりも金銭的なプレッシャーがかかることで、
漫然と薬を飲み続けるという選択肢にもブレーキがかかります。
どうすれば薬を使わずに自分の症状を整えていくことができるかという所へ考えが及びやすくなります。
そうした方が結果的により健康な状態へ近づけるかもしれません。

もちろんそうやって一生懸命節約した保険料が
国民にとって本当に良い方向に使われるのかどうかが、
非常に疑わしく感じられてしまうくらいに政府の信頼は失墜してしまっているかもしれませんが、

それでもだからと言って保険医療制度にどっぷりと浸かり続けていると、誰も幸せにならないのです。
むしろ「こちらの方が幸せだ」と誘導されながら徐々に地獄へ案内されているようにさえ感じられます。

だから私は自分が高齢者になっても、
救急の場合を除いて、なるべく保険医療制度を使わない生き方を選択しようと思います。
よくわからないことが起こった場合はとりあえず病院に頼ったとしても、
そのまま自分では何も努力せずに病院に頼り続けるようなことは決してしないようにしたいと思います。
願わくは私の選択に理解を示して下さる人が増えて、
保険医療制度の外側から医療がよくなっていけばいいなと思います。

たがしゅう