令和4年度診療報酬改定に思うこと

この2022年4月から診療報酬改定という保険診療のルール改正が行われます。

2年に1回定期的に行われているこのルール改正は保険診療でのオンライン診療にも大きな変更点を与えています。私のオンラインクリニックも2021年6月から保険診療を開始したので影響を受けることになる話です。

一番大きな変更は従来よりも高い保険点数が与えられたということです。これまであればオンライン診療で初診を行った場合の初診料の保険点数は214点でしたが、4月以降は所定の届け出を行った保険医療機関であれば初診料の251点という保険点数となりました。

これがどういうことかと言いますと、保険点数1点が10円の換算ですので、まずこれまであればオンライン診療の初診を行ったらこれまでであれば2140円の報酬が発生し、3割負担の患者さんを診た場合は2140円のうちの3割の642円を患者さんが窓口で支払い、残りの7割の1498円は国民皆で貯めた保険料を管理する支払基金という組織に申請して認められたら支払われます。

それが4月以降は同じオンライン診療の初診を行うと、3割負担の患者さんが窓口で支払う額は753円(2510円×0.3)、後から支払基金から受け取る額が1757円になるということです。

増収につながった方が経営が楽になる医療機関側としては嬉しい変化に思えるかもしれませんが、この改正は患者さんにとっては同じ診療を受けても支払う額が若干増えるという、言ってみれば損な変更だと思います。

それともう一つ重要なことは、この変更は医療機関側が厚生局と呼ばれる組織に所定の届出を行うことで初めて適用されるという点です。

届出というのはどういう作業なのかと言いますと、厚生局に対して担当医師がオンライン診療のガイドラインを遵守していることを宣誓したりですとか、どこでオンライン診療を行うのかを明記するですとか、オンライン診療を行うに際して義務付けられている研修を受けたかどうかを確認するですとか、毎年7月にどのようなオンライン診療を行ったかということを厚生局に報告することを約束するですとか、それらの内容を記した所定の書類を提出するということです。

何が重要なのかと言いますと、この届出という作業を行うことはまずわずかながらも患者さんの金銭的な不利益につながるということを意味するということ、そして色々な意味で厚生局の管理下に入るということを意味しているということです。

一般的な保険医療機関であれば疑問さえ持たないところかもしれません。増収につながるのであれば届出をし、つながらないのであれば届出をしないというシンプルな話なのかもしれません。

ただ私はたとえ増収があるのだとしても、そんな届出は本当にすべきだろうかと考えてしまいます。

一番気になっているのはオンライン診療のガイドライン全体に「オンライン診療は対面診療の補完であるべき」という考えが根強く見られていて、今回の届出のための必要条件も「あくまでも対面診療の補完の目的でやってくださいね」というプレッシャーをかけてくるような内容であるように私には感じられます。

前から当ブログで述べていますように、私はオンライン診療は「対面診療の補完的存在」ではなく、対面診療とは全く別の可能性を秘めた診療形式として発展していくべきだと考えています。必ずしも対面診療の補完的役割に留めておく必要はないのです。

例えば、九州に住む私が北海道に住む患者さんを診ることは、対面診療ではまずあり得ない、オンライン診療だからこそ拓けた診療であるわけです。

これを北海道の患者さんを北海道の医師が対面診療を行う場合と比べられたら診療の質という意味では対面診療に劣るかもしれませんが、今までであればあり得なかった患者と医師のマッチングを提供したという意味をみれば、これは対面診療の補完ではなく、「新たな価値を創造」しているわけです。

そうなるとこれを対面診療と比べるのではなく、「新たに生まれた価値をどうすれば高めていくことができるのか」という視点で捉えれば、オンライン診療の環境下であってもより安全に行うことができる診療形式を検討していくことができます。

具体的に言えば、それは西洋薬よりも漢方薬を使い、使う場合も一定期間のみに限ることで副作用リスクを下げるやり方であったり、食事指導やストレスマネジメントを主体として投薬をせずとも症状を改善できるやり方を検討していくこともできるわけです。

「オンライン診療は対面診療の補完的役割」だと留める発想から離れて、もっと広くオンライン診療の可能性を模索することでオンライン診療の発展への道は拓けていくのではないかと私は考えています。

なので、オンライン発展の可能性を狭めて、なおかつ患者さんの金銭的負担を高めるような届出は行わないという選択肢もあるように私は考えています。

願わくはこの届出によってオンライン診療を行う側の医療機関が守りに入りすぎてしまわないことを祈っています。

 

たがしゅう