もう一つのオンライン診療の発展の仕方

先日オンライン診療でパーキンソン病の治療に取り組む医師の講演を聞く機会がありました。

私も専門が脳神経内科でパーキンソン病の患者さんを診る機会が多く、興味深く聞かせてもらったわけですが、

結論から言うとその先生が理想とするオンライン診療と私が考える理想のオンライン診療には大きな乖離があるということがはっきりとわかりました。

というのも、演者のドクターは次のような趣旨のことをおっしゃっていました。

「今はまだ病状が安定したパーキンソン病患者さんの継続処方や、D to P with Dと呼ばれる専門医がかかりつけ医の先生と連携してパーキンソン病患者さんを診ることがオンライン診療の中心ですが、

ウェアラブルデバイスや画像技術の向上、AIの進化などで問診の効率化などが図れれば、今後パーキンソン病患者さんへの診療の質は大きく向上していくことでしょう」

読者の方はそれはとても良いことだと思われるかもしれませんが、

私からすればこのドクターがおっしゃるオンライン診療の方向性は、どんどん管理する医療への道を突き進んでしまっているように見えます。

今までであれば病院に行きさえしなければ管理されなかった状況が、もはや病院に行かずとも管理されてしまうことのオンライン診療が貢献してしまっているような状況です。

私はそんな世界を目指すべきではないと考えています。

 

 

私が考える理想のオンライン診療は、患者さんが医師や病院に管理されることなく、自分が主体となって身体を整えていくための営みをサポートする仕組みとして発展し続けることだと思っています。

パーキンソン病は端的に言えば、もはや自力ではどうしようもないほどに自律神経が乱れてしまっている状態の人に起こります。

それが故に「先生にお任せするしかない」という境地に至ってしまっている人がほとんどという印象です。

自らその選択を主体的にしてしまっている人は私にとっては残念なことに、従来の医療に身を委ねるより他にないわけですが、

そこまで問題がこじれ切る一歩手前の段階でオンライン診療に触れ、自分で身体を整えるための方法について学び、試行錯誤を繰り返す中で今までではなかった治療効果を実感できるようになり、

そして最終的には自分で自分の身体と向き合って調整し続けて行けるようになるよう手助けし続けると言うのが私が理想とするオンライン診療の姿です。

ですから私にとってウェアラブルデバイスやAIなどの技術が進歩することは診療の助けになる一方で、逆に自分で自立するという考えから遠ざける側面(例:そうした装置がないと自分を整えることができない)もあるので、

上手に付き合っていかないといけない存在、どういう風に付き合っていくのかもそれぞれがよくよく考えていかないといけない、少なくともオンライン診療の発展に向けて手放しで歓迎できる存在ではないと私は思います。

その代わりに自分で自分の体調を診るという文化が浸透したり、機械に頼らず身ひとつでできる体調の確認方法が発見されたり、人と人とがつながり合うことで自分だけでは見えなかった自分の姿がわかり新たに整えることを検討できたり、など

そういう方向にオンライン診療が発展していくことを私は望みます。

しかしおそらくこれから現代医療におけるオンライン診療は主として今回の講演のドクターが目指す方向に発展していく流れは避けられないだろうとも思います。

それでもその流れとは異なる形でもオンライン診療が発展をすべきだと声を上げながら仲間を増やしていければいいなと思っています。

 

たがしゅう