保険診療ではオンライン診療は発展しにくい

当ブログでも紹介したLINEによるオンライン診療サービス「LINEドクター」についてですが、

9月10日にこれが発表された際に私のクリニックも即申し込んで11月からのサービス利用に備えてはいたのですが、

本日何気なく「LINEドクター」の医療機関用Q&Aを見ていたら、

当初は書かれていなかった「サービスの仕様上、自由/自費診療の医療機関は利用できません」との文言が追加されていて驚きました。

LINE側でどのような話し合いが持たれたのかはわかりませんが、

この文言の追加によって、完全自由診療でオンライン診療を提供している私のクリニックは「LINEドクター」の利用が不可となりました。

私はこのことを大変残念なことに感じています。

それは私のクリニックで利用できなくなったということも勿論ありますが、

それ以上にオンライン診療の発展において大きなブレーキとなってしまったと思うからです。

なぜ保険診療でオンライン診療を行うことが、オンライン診療を発展しにくくするのでしょうか

なぜならば保険診療というのは、エビデンスというものが重視される世界です。

狭義のエビデンスとは、とある治療法が集団的に効果があると医学論文によって示されていることを指しますが、

要するに医学論文で実証されていることのみが重んじられる世界です。

ところがオンライン診療はまだまだ発展途上の分野なので、エビデンスというものは数えるほどしかありません。

従って保険診療でのオンライン診療は極めて厳格にルールづけがなされ、これを守りながらゆっくりとオンライン診療を広めていくことになります。

それ自体は安全なオンライン診療を運営する上で良いことのように思えるかもしれませんが、

実は現在病院医療の主流である西洋医学中心の医療をそのままオンライン診療を行うことは必ずしも安全ではありません。

それはエビデンスのある医療が安全であるとは限らないことをそのまま意味するわけですが、

保険診療でオンライン診療を行うことはリスクある病院医療で行う治療に限定させることでオンライン診療の発展を妨げることになります。

オンライン診療は、オンライン診療の仕組みに耐えうる新たな治療体系を構築していく必要があるので、

選択肢を広げた自由診療の領域で、試行錯誤の中で可能性を模索していくことが必要不可欠だと私は考えています。

その結果、私のオンライン診療では徹底的な個別化医療を構築することになっています。

つまり、Aという患者に施す治療とBという患者に施す医療が全く異なるという状況が生まれています。

従って集団的な効果を示すエビデンスでの評価に、私のオンライン診療のスタイルは乗りにくいということです。

私が実証できるのは個々の症例でオンライン診療でどのような恩恵を受けることができたかという一例一例の報告だけです。

しかしその積み重ねによってオンライン診療の質はどんどん高まっていくはずです。

これとはエビデンスとは別の軸での医療の発展をもたらします。

 

保険診療に絶対の信頼を抱いている人にとってはなかなか理解してもらえない話かもしれませんが、

オンライン診療を保険診療でしか認めないということは、

言わば飛行機が大いなる可能性に向かって飛び立つのに、翼を片方もがれているような状態です。

LINEの判断に再考を願うばかりですが、そう言っていても仕方がありません。

私は私でオンライン診療の自由診療による可能性を模索し続けたいと思います。