人生をかけて医療の文化を変えていく

コロナの影響でオンライン診療には追い風が来たのではないかとよく尋ねられることがありますが、

少なくとも完全自由診療で行っている私のオンラインクリニックへはそれほど大きな変化は感じられていません。

確かに初診からのオンライン診療が仕組みとして可能になった環境変化自体はオンライン診療が広まる大きな第一歩となっていることには違いありませんが、

残念ながらその第一歩は一歩のまま留まって、先に進んでいってないというのが実情だと思います。

その背景としては今までの医療に対する文化的価値観が強固に構築されているということがあって、

環境が開かれていたとしてもその新しい世界になかなか踏み入れてみようという気がなかなか起こらないのではないかと思います。

そんな中で、オンライン診療の初診はかかりつけ医においてのみ解禁されるべきという議論が、

厚生労働省主催の検討会で行われているというニュースが報道されました。

これはすなわち、紹介状などの事前情報なしでオンライン診療を行うという「完全初診」が制限されるということを意味しますので、

オンライン診療の普及においては後退といってよい変化だと私には感じられます。

その議論の中で浮かび上がってくる価値観の中で主たるものは「いきなりオンライン診療を行うことは見逃しのリスクがあって危ない」という価値観です。

この価値観が医療を提供する側の立場の人間の大半の中に強固に存在しているがゆえに、

オンライン診療はいまいち広がっていかないし、

おそらく医療を受ける側の人達もその医療を提供する側の強固な価値観に伴う主張に引っ張られる形で世論が形成されているように思います。

価値観の異なる相手にその価値観と異なるメッセージを伝え、受け入れてもらうことは不可能とさえ思えるほど至難の業です。

少なくとも簡単にひっくり返るものとは到底思えません。オンライン診療の普及に向けての道はどうやら長いものになりそうです。

 

そうすると価値観の異なる相手にどうすれば異なる価値観を受け入れてもらうことができるか、ということに注力する必要があります。

真っ先に思いつくのは「実績を作ること」です。

誰が見てもオンライン診療をやった方が有益であるという実績を作ることです。

しかし糖質制限でさえ圧倒的な実績があっても世の中が変わらないところを踏まえますと、

圧倒的な実績があってさえも単なる必要条件の一つに過ぎず、十分ではないとも言えるでしょう。

次に必要となってくるステップは仲間を増やすことです。

筋が通っていて、実績もあれば、必ず仲間が増えてくるはずです。そうした仲間を地道に一人ずつ増やしていく作業が次のステップとなります。

そして仲間が増えれば作れる実績の質も高くしていくことができます。

そこから先は仲間を増やす作業と実績の質を高める作業が互いにリンクして相乗効果をもたらしていく構造になると思います。

ただし、繰り返すようですが長い道のりです。

ひょっとしたら自分の人生の中で完結しない可能性も十分にあります。

その場合は後世に引き継ぐための工夫も施しておく必要もあるでしょう。

筋が通っていることであれば、意志は必ず受け継がれ、

もしも筋の通っていない内容なのであれば、自然に淘汰されていくことでしょう。

なんだか壮大な話に聞こえてきますが、

世の中にある固定的な価値観を変えるということはそのくらい大きな出来事なのだと思います。

私はその偉業に挑戦する人生を歩んでいくつもりです。