物事には必ず正の面と負の面とがあります。
認知症や神経難病などの難しい病気を前にした時に物事の悪い面ばかりが見えてしまうのはある意味仕方のないことかもしれません。
しかし、そんな時でも例外なく物事には正の面と負の面とがあるものです。
私はオンライン診療で難しい病気の患者さんへアプローチする時に大切にしているのは、「今あなたに何が残っているか」ということに意識を向けさせることです。
「できないことが多い」ということは「できる事が残っている」ということを意味します。
折角できることが存在しているにも関わらず、心がそのできることに対してフタをしてしまっていることが実に多いのです。
赤ん坊だってできることから始めることしかできないものです。未熟者だった最初はできることしか行うことはできません。
しかしその残っている何かで何ができるかという事を突き詰めて考えていくことが難局を打開することにつながります。
例えば認知症であれば、笑うことができるのであれば、その機能を適正化することへ意識を注ぎますし、
歩けるのであればそれをうまく活かす環境を作っていくようにしますし、嗅覚が大丈夫ならそれを活かしたアロマテラピーアプローチも考えます。
できないことばかりに意識が向き、これらが今後悪化していくという概念が頭の中を支配すると、本当に悪化の一途を辿ることになります。
しかしできることに注目するというアプローチを行えば、少なくとも心が症状を悪化させることはなくなります。
そして残存機能を最大限に活かすことができるので、今できる最善の結果へとつながる道筋ができるということになります。
言うまでもなく、その「できることに注目する」という行為ができるのは本人だけです。
私がオンライン診療で行う治療がうまくいくかどうかは本人にかかっているのです。
たがしゅう