オンライン技術は医療で利用しきれていない

オンライン診療中に万が一急変が起こった時の対応について今一度考えてみます。

勿論急変の内容にもよるのですが、もしも緊急入院が必要となるような類の急変が起こった場合、

例えばそれを本人ではなく、本人の家族からオンライン診療医である私に相談されて対応を求められた場合、

近所であればすぐに来院してもらうよう指示することもできるし、

土地勘があり周辺の医療資源をよく把握している場所でなら適切な病院名を挙げて、そちらへ緊急受診するように促すこともできるでしょう。

しかしこれがもし県外の、かなり遠くでオンライン診療を行っている患者さんからの問い合わせだとしたら、

「すぐに来て下さい」の手も、「◯◯病院へ緊急受診した下さい」の手も使えません。

せめてできるのは、「救急車を呼んで最寄りの総合病院へ搬送してもらって下さい」と言うのと、

搬送先の病院名がわかり次第、救急診療に当たる先生方の少しでも役に立てるよう、そちらへ紹介状(診療情報提供書)を送ることくらいです。

ところが遠距離だとその書類を郵送しても届くのは数日後となってしまうので、

緊急の対応にはまるで役立たない情報となってしまうということが起こります。

通常、遠隔の文書情報のやり取りといえば、メールなど何らかのインターネットサービスを用いるのが一般的ですが、

医療情報の場合は個人情報保護の観点からまずメールでの紹介状のやり取りは行いません。

仮にメールで送ろうにも相手の医療機関にその窓口となるメールアドレスはまずありません。

従って、こういう場合の情報伝達手段としてはFAXでということになるのですが、技術面だけで考えればこれって一回り遅れている体制であるように思えます。

技術面では遠隔で成立する環境を整えることができるのに、それとは別の理由で実現できないというのはもったいない話です。

勿論守らなければならないルールはあるとは思いますが、ルールのために患者さんに不利益が被るようでは本末転倒で、何のためのルールかということになってしまいます。

オンライン診療を普及させていく上で、このような技術面と運用面とで乖離があるということも知っておく必要があります。

そして知った上でどのように普及させていくかに関してはある程度戦略が大事になってくると思います。

そのギャップを把握しておくことは戦略を考える上での第一歩となるであろうと思います。

たがしゅう