ストレスマネジメント講座⑪ 自律訓練法

一般にストレスがかかると自律神経のうちの交感神経が活性化され、交感神経優位の状態となります。

自律神経というのはアクセルの交感神経とブレーキの副交感神経のバランスがとれていてはじめて正しく機能することができますので、

ストレスによる身体・精神反応を緩和するためには、副交感神経を刺激するための方法を知っておくことは、バランスをとるためにも重要なことです。

そして副交感神経を刺激するために最も重要な考え方が「リラックス」です。

本日はストレスマネジメントとしてのリラクゼーション法として「自律訓練法」について紹介したいと思います。

自律訓練法は、1932年にドイツの精神医学者シュルツによって考案され、1950年代に日本に紹介されました。

以来、心身医療のみならず、教育、スポーツ、産業などの領域に、メンタルヘルスや対人関係の改善、能力開発、事故防止などの目的で、積極的に導入されてきました。

どういう方法なのかと申しますと、簡単に言うと「自己催眠によって人為的にリラックス状態を作る」のが「自律訓練法」ということになります。

またリラクゼーション効果のみならず、トロフォトロピック効果(蓄積された疲労の回復、エネルギーを蓄積することで自己治癒力・自然な力が最大限に発揮されること)、受動的注意集中(気づきの能力の高まり)、アイデア・創造性への刺激などの効果もあるとされています。

具体的な方法としては以下の背景公式と6つの公式からなります。

背景公式:気持ちが落ち着いている
1.第1公式(重感練習):両腕両脚が重たい
2.第2公式(温感練習):両腕両脚が温かい
3.第3公式(心臓調整):心臓が静かに規則正しく打っている
4.第4公式(呼吸調整):楽に息をしている、呼吸が楽だ
5.第5公式(内臓調整):お腹、胃のあたりが温かい
6.第6公式(前額部調整):額が快く、心地よく涼しい

準備段階として、姿勢は椅子に深めにゆったりと腰かけるか、仰向けに横になった姿勢でもよく、くつろいだ楽な姿勢をとり、目を閉じます。

ネクタイやベルトなど身体を圧迫するものはあらかじめ緩め、トイレなどもすませておきましょう。

明るすぎる照明は控えて、静かでリラックスした環境を整えるところから始めます。

準備ができたら、背景公式の「気持ちが落ち着いている」を心の中で繰り返します。

背景公式は、自律訓練法のすべての段階における基本となるもので、各々の公式練習のたびに行います。

進め方は第1公式から始め、習得したら次の公式を加えていくという方法をとります。

第1公式の場合、まずは自分の右腕に意識を向け、右腕の重みを感じながら、「右腕が重たい・・・重たい・・・」とイメージしながら心の中で唱え続けます。

次に左腕に意識を向け、同様に「左腕が重たい・・・重たい・・・」と頭の中で繰り返します。

最後に両腕に意識を向けて同様に「両腕が重たい・・・重たい・・・」と行っていきます。

第1公式が終わったら、第2公式へ、行ける所まで進んでいきます。

注意すべき点は、できれば専門医の指導を受けた後に始めるか、もしくは誰かが見守る中でやった方がよいという点です。

というのも自律神経法には消去動作というものがあり、セッションの最後にそれを行わないと自己催眠が解けないという事態が起こりうるからです。

消去動作とは①両手を強く開閉し、②両肘の屈伸運動を行い、③最後に大きく延びをして深呼吸を行い、静かに目をあける、というものです。

こうしたルールをきちんと守り、守れなかったとしても周りがサポートできる環境が重要です。

中には自律訓練法を行うのに適していないという方もいます。それは例えば以下のようなケースです。

1.治療意欲がない者
2.自律訓練法の練習中の徴候や練習そのものを十分に監視できないとき
3.急性精神病や統合失調症的反応の激しいとき
4.知的能力がかなり劣っている患者
5.5歳以下の子ども

催眠術というとどこか胡散臭いイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、「自律訓練法」は主流医学の中できちんと認識されているれっきとした治療法です。

ということは催眠というのは現実に起こしうる状態であるということですし、

人がどのように考えるかということは、人の身体状態へ密接な影響を与えるということの逆証明でもあるように思います。

あるいは「1.治療意欲のない者」には行うことができないというあたり、

主体的でない患者の自律神経を整える行為が困難を極めるという可能性も見えてきます。

自律訓練法は、習得すれば、いつでもどこでも短時間でリラックス状態を得られる利点があります。

1回2~3分程度の練習を3回繰り返して1セッションとし、1日3セッション行うのが理想的です。

医師の監視下で行うべきという縛りはありますが、

ストレスマネジメントにおいて、大いに参考になる方法なのではないかと思い紹介致しました。

たがしゅう

「ストレスマネジメント講座⑪ 自律訓練法」への4件のフィードバック

  1. たがしゅう先生、おはようございます。

    今日、先生のツィッターを開いたらカラフルな風船の動画がふぁ〜っとなっていて、「?!」となりました。

    何かおめでたい事があったのでしょうか?もしそうなら、おめでとうございます!

    もし、他の意図があって動画をプラスしたのなら、ごめんなさい、違和感ありありです。

    たがしゅう先生の理知的な雰囲気と、あの動画が合わない〜(涙)

    ツィッターの表紙(?)のたがしゅう先生の顔写真は、「理知的、ふわっとした親しみ、医師、抑制、ちょっと不器用」が伝わってきます。それと、あのカラフルな感じが合わない。

    たがしゅう先生は今のままでも、素敵だと思います。

    “いい素材に余計な味付けは要らない”と思うのですか・・・

    失礼な表現がありましたら、お許しください。単純、即物的な自分からの率直な意見です。

    あっ!9月29日の東京の講演会、すっごく楽しみにしています!今年3月の東京講演会でたがしゅう先生濃紺のスーツをお召しでしたが、すっごくお似合いでしたよ!それこそ、“雰囲気とばっちり合って”いました!

    お読みいただきありがとうございます。

    • いわき市 さん

      コメント頂き有難うございます。

      ツイッターの風船は知りませんでしたが、おそらく今日が誕生日だからだと思います。きっと明日以降元に戻るのではないかと思います。いつもありのままを御評価頂き心より感謝申し上げます。

      9月29日の情報もいち早くフォロー頂き有難うございます。またそれまでと違う観点からのお話を準備しております。お楽しみにして頂ければ幸いです。追ってブログ等でも告知したいと思います。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

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