遠慮なく本音が言える診療の場

私が独立してオンライン診療を始めたら、

私が診る患者さんは基本的に私の診療を希望している方々だけなので、

周りの様々な環境に気を遣うことなく、その患者にとって本当に必要だと思う助言を正直に言うことができると思います。

今の医療体制で私がなかなか正直にアドバイスし切れず悩むことのひとつに、

一度脳梗塞を発症した人の再発予防として、抗血小板薬と胃酸分泌抑制薬の二種類を同時処方するという医療行為があります。

脳の血管が再び詰まらないように血液をサラサラにする抗血小板薬を飲むのはまだわかると思いますが、

なぜ胃酸を分泌する薬を同時に処方するのかと言いますと、

抗血小板薬の副作用で胃潰瘍が発生することがあり、それを予防するためだとされています。

ところがこの胃酸分泌抑制薬によって今度は食物や異物の消化のために必要な胃酸が分泌されにくくなってしまうので、

消化吸収能力が低下してしまうという副作用が理論上起こってしまうことになります。

それでも脳梗塞を再発したり、胃潰瘍で吐血しショック状態に陥るよりマシだと、

この同時処方が脳梗塞後の再発予防策のスタンダード治療として繰り返されているのが実情です。

もっと言えば、抗血小板薬も血液をサラサラにするといえば聞こえがいいですが、

身体の各部位に損傷があった時に血小板は止血部隊として活躍するわけなので、

血小板の働きを止める抗血小板薬は反面、身体の自己修復機能を低下させている薬だという側面もあるのです。

さらに動脈硬化が固定している状態ならばまだよいですが、

血液の乱流で血管の内側の内皮細胞が損傷を受けた場合にも本来なら血小板が真っ先に傷を塞いでくれるのに、

その傷の修復も出来ないばかりか、場合によっては今度は血管が破れる事態へと発展しかねないわけです。

ですので本音で言えば、私は脳梗塞の再発予防にはこれらの薬の同時処方をすべきではないと考えています。

しかしこれらの薬を飲まないというだけでは不完全で、そもそも脳梗塞を起こすに至った本質的な原因にアプローチしない限り、

ただ薬を飲まないという選択だとこれはこれで危ないのです。

では脳梗塞の本質的な原因は何かと言いますと、考えられる中でそれに最も近い現象が「酸化ストレス」です。

酸化ストレスとは、身体の中で起こる化学反応として繰り返されている酸化反応と抗酸化反応のバランスが酸化反応に傾いた状態のことで、

酸化ストレスがかかると活性酸素という細胞障害性のある物質が生み出され血管内を始め様々な部位が傷つき、動脈硬化の原因にもなっているというわけです。

従って脳梗塞の再発予防のために血液をサラサラにするのではなく、酸化ストレスを減らすような治療を行えば、もっと上流で脳梗塞の再発予防を効果的に行うことができます。

そして酸化ストレスを減らすための最もシンプルな方法が糖質制限です。糖質摂取により起こる血糖値の乱高下、もしくは高インスリン血症による酸化ストレスを確実に減らすことができるからです。

また糖質を控える代わりに摂取する脂質やタンパク質を十分量摂取することで炎症を抑えるコルチゾールや脂質メディエーターの分泌もスムーズとなり血管構造も材料であるタンパク質を補充することで強化されます。

さらに食事以外のストレス源に対してストレスマネジメントも加えれば鬼に金棒です。従って私の本音は薬を飲まずに糖質制限+ストレスマネジメントが最適解です。

ところが現実的には指導しても糖質制限を行う人は常識の壁や糖質の中毒性の問題で1〜2割、

また脳梗塞を起こした人はほぼ全員が従来型の薬物療法を勧められるがままに行なっている人がほとんどです。

仮に糖質制限をあまりしない人に上記の理屈を説明したとして、結局従来の常識に従い、あるいは中毒から抜けられずに糖質摂取を正当化する都合のいい言い訳を作り出し、

糖質制限をしない、もしくはやったとしても中途半端な糖質制限に留まる人が私のアドバイス通りに抗血小板薬も胃酸分泌抑制薬もやめたとして、

糖質摂取を中心に徐々に酸化ストレスが蓄積されて脳梗塞が再発した日には、医師側からは「私の言うことを聞かないから再発したんだ」と糾弾され、

患者さんは患者さんで、「薬を飲まない方がよいと言ったくせに」と私のことを恨んでこられる可能性があります。

下手したら患者を標準的でない治療へと誘導して脳梗塞を再発させたとして医療訴訟の対象となってしまう可能性さえあります。

だから、そうした可能性を踏まえて、現時点で雇われの身の私としては、

本当は薬をやめて糖質制限+ストレスマネジメントを選んでほしいと思っているけれど、

実際には抗血小板薬や胃酸分泌抑制薬を飲むことを許容しながら、

なるべく酸化ストレスを減らしてもらうべく、糖質制限+ストレスマネジメントをできる範囲で行なって、という指導に留めるのが関の山です。

これがオンライン診療で、最初から私の意見を求めている患者さんで、

主体的医療の概念を理解し、責任を全て医師に預けるのではなく、自分の健康に自分で責任を持つという姿勢のある方に対しては、

私も遠慮や気遣いをすることなく、本音をストレートに伝えるだろうと思います。

その上で患者さんが私の意見をどう受け止めて、どこまで実践するかは患者さんの自由ですが、

そのようにオンライン診療では本来あるべき医療を行うことができる場となりやすいのではないかと私は考える次第です。

たがしゅう

「遠慮なく本音が言える診療の場」への2件のフィードバック

  1. たがしゅう先生
    おはようございます。
    まさに主人が脳梗塞2回脳出血1回繰り返しております。DVD購入しました。なんとか
    日常生活は出来ていますが次回起きたらと恐くなります。是非オンライン診療お願い出来たらと何年も前から思っていました。

  2. 瀬戸英子 さん

    コメント頂き有難うございます。

    私を望む患者さんへは私のできる最大限のアドバイスをさせて頂きます。勿論、強制は一切致しません。アドバイスをどう取り入れるかを患者さんが選べる医療を提供したいと考えています。

    オンライン診療クリニックの開設まで今しばらくお待ち頂ければ幸いです。

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