とある医師へ、オンライン診療専門のクリニックを開きたいと語ったら鼻で笑われた経験があります。
多分その医師にしてみれば、オンライン診療は対面診療の補完的役割なのであって、オンライン診療だけ行うなんていうのはとんでもない話だ、とでも思われたのでしょう。
ただ私はオンライン診療しかしないというつもりで語ったわけではなく、オンライン診療に精通するクリニックを開きたいという意味で言ったのであって、対面診療をしないとは言ってないのですが、
鼻で笑われたようなリアクションを受けて、私はそれ以上その医師へ相談する気を失くしてしまいました。
しかも、その医師はオンライン診療に比較的精通しているとされる人だったので、失望感もひとしおでした。
オンライン診療の普及を妨げる要因としては医師側の問題が大きいように改めて感じています。
先日のオンライン診療研究会に出席しても改めてわかりましたが、オンライン診療の患者側における潜在ニーズはかなり大きいものがあるように思います。
現時点でオンライン診療なんてよくわからないと思っている患者さんでも、状況によって潜在ニーズは掘り起こされると確信に近い感覚さえ持つことができます。
総務省主導で行われたオンライン診療の実証実験でも患者の満足度は極めて高かったように見受けられました。
普通この手の新しい実証実験だと賛否両論出てしかるべきですが、ほとんどが肯定的意見であったというのは前代未聞なのではないでしょうか。
一方で、これだけオンライン診療で満足されるということは、それだけ対面診療の質が低いということの裏返しなのかもしれません。
そういう意味では、オンライン診療の普及は対面診療の質を向上させようというインセンティブを働かせる良い機会になるのかもしれませんが、
私がオンライン診療を普及させる目的はそのような所にはとどまりません。
私の目的は「患者に健康を守るための主導権を取り戻させること」です。
現状では、自分で健康を守ろうにも何をどうしてよいのかわからない人がほとんどです。
テレビやネットの情報に翻弄されたり、検査のデータを信じて自分の体調を疎かにされたり、まさに混沌の様相を呈しています。
そんな時に自分が何をすべきかを相談できるアドバイザー的な存在が必要不可欠だと私は考えています。
現状ほとんどの医師が行っていることは実質アドバイスではありません。
エビデンスという名の強固に盲信された固定的価値観の押し付け作業です。
相手が機械のように多様性の低い対象であればまだしも、医師が相手にするのは多様性の著しい人間です。
人それぞれ様々な考え方を持っているのにも関わらず、それを一つの答えで解決しようとしているのが今の医療の主たる構造であるように私には思えます。
その様々な考え方をひとつひとつ丁寧に紐解き、寄り添い、共感して提案する、
そのような大変人間らしい行いを試みてもらえる場が、病院は数あれど、そんなことに対応してくれる人がどこにもいないから、
どこでもつながれるネットというシステムを使ってせめて私だけでもそんな医師になろうとしているのです。
そのスタイルが私以外の医師においても展開されればオンライン診療である必然性はないように思いますが、
いまこの保険医療制度の中でこの主体性支持医療を行うのは不可能に近いと思います。
だから私はオンライン診療医になるのです。自由診療の枠組みの中で。
たがしゅう