森田療法とは何か

動機付け面接に続いて、私がもう一つオンライン診療を行う上の心得として参考になると感じた考え方に「森田療法」というものがあります。

森田療法とは1919年に精神科医の森田正馬(もりたまさたけ)先生によって考案された神経症に対する精神療法です。

森田療法という呼称は森田先生自身が名付けたわけではなく、その考え方があまりに素晴らしかったため、森田先生のお弟子さん達がその考えをまとめ後に「森田療法」と呼ぶようになったという経緯があるようです。

その点、親鸞の「歎異抄」や「アドラー心理学」などにも通じる構造がありますね。

さて、その森田療法ですが、一言ではなかなか表現しにくい部分があるのですが、重要点の一つに「あるがまま」の姿勢を大事にする、というものがあります。

神経症と称する状態、今の精神医療の概念で言えば、不安症、パニック障害、強迫神経症などの疾患を包含する概念ですが、

そうした心理の状態を「是正しなければならない悪い状態」と捉えるのではなく、その人自身の特徴だと捉え直し、「かくあるべき」という捉われをなくそうとするという姿勢が森田療法の根本にはあるのです。

これは病名不要論を掲げる私の考え方にも通じる所があり、そもそも病気だと認識する、あるいはそのようにレッテルを貼られることが、病気と健康の概念を作り出し、健康の領域に入っていない自分に苦しむことになってしまうと思うのです。

そうは言っても、病院で血液検査とか画像検査で異常が指摘されて、明らかな異常が指摘されたら病気だと認めざるを得ないじゃないかと思われるかもしれませんが、

それを明らかな異常だと認識しているのは人為的な基準です。認識されようがされまいが、あるがままの自分であることに違いはないのです。

これは病気を忘れ、自分をごまかして生きればハッピーになれるというごまかしの考え方とは全く異なるものです。病気だと認識し続ける事によって実際に自分の心が無意識にもたらし続ける無用な慢性持続性ストレスが問題なのです。

病気を忘れよというのではなく、病気だと認識せず「あるがまま」の自分だと認識することによって、少なくとも病気を治さなければならないという強迫観念からは開放される可能性があります。

森田療法の場合は、神経症をもたらす性格傾向、例えば内向的、自己内省的、小心、過敏、心配性、完全主義、理想主義、負けず嫌いなど、そうした特徴を「是正すべき対象」だと思わないように、そうした性格の良い所に目を向けさせるために、様々な工夫を凝らすわけです。

これは神経症に限らず、あらゆる病気の治療に役立つ考え方であるように私には思えます。そしてそれが対話により有効活用できるという点が極めて重要です。

面白いことに森田療法で治療した患者さんは「よかった、おかげさまで治りました!」というリアクションではなく、「これでよかったんですね・・・ありがとうございます・・・」といったある種モヤモヤするとも言われかねない感じで治っていく事が多いそうです。

まさに自分が自分と向き合って到達する境地、その延長線上に病気からの卒業があるように思います。

見えない主体性に注目させる動機付け面接、病気を「病気」だと認識せずあるがままの自分の状態に注目させる森田療法、

これらの考え方は主体的医療の推進に欠かせない要素であるように私は感じます。

たがしゅう

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