オンライン受診勧奨と遠隔医療相談を分ける意味はあるか

改定ガイドラインには「オンライン診療」と「遠隔医療相談」の枠組みについても定義の見直しがなされていました。

簡単に言うと「オンライン診療」は診断や処方を行うオンラインコミュニケーション、「遠隔医療相談」は診断や処方を行わないオンラインコミュニケーションです。

こう言うとスッキリしているように思えるかもしれませんが、実際の場面で考えるとなかなかスッキリしない概念です。

なぜならば処方しないのはまだしも、「遠隔医療相談」で診断せずにオンラインコミュニケーションをするといっていても、

話の流れで疾患名が出てくる可能性は十分考えられるからです。

そのような、処方は行わないけれど、考えうる診断名を列挙するコミュニケーションの場合は、「オンライン受診勧奨」という別の枠組みになります。

実はこれ、単に枠組みの名前が変わるというだけの問題ではなく、「オンライン受診勧奨」だとガイドラインのルールに従う必要があり、「遠隔医療相談」だとガイドラインのルールは適応されないということが定められているのです。

例えば「原則初診対面」のルールは「オンライン受診勧奨」には義務付けられ、「遠隔医療相談」には義務付けられないということです。

これがいかにおかしい話かというのは少し考えてみればわかります。

今「遠隔医療相談」で長引く咳を止める方法について、ある方から相談を受けるとします。

一般的な対処法をお話ししている中でその方から「実は息子が今風邪を引いていて相談に乗ってもらいたいのです」と言われたら、

「申し訳ございません。かぜという病気の話になりますと、遠隔医療相談ではなく、オンライン受診勧奨になります。あなたはまだ初診を対面診察で行っておりませんので、ここから先はご相談に乗ることはできません。あしからずご了承下さい。」

ということが起こりうるという話になります。そんな不自然な話があるでしょうか?

遠隔で相談するのであれば当然病気の話は出て然るべきです。それをあらかじめ疾患名を出さずに相談に乗るなんてのはとても難しいし、そんな条件で相談する人などいるのだろうかとさえ思います。

それとも病名を出すこと自体は大丈夫だというのなら、今度は「オンライン受診勧奨」の意義がわからなくなります。

「オンライン受診勧奨」と「遠隔医療相談」をわざわざ分ける意味が私には理解できません。

国主導のオンライン診療のルール作り、病院医療中心の従来の常識にとらわれ過ぎて、混迷を極めた様相を呈しているように私には思えます。

たがしゅう