私が好んで参加している哲学カフェというイベントでは、
複数の人達と対話する際に守ることが求められているルールがいくつかあります。
中でも最も重要なルールは「相手の意見を全否定しない」というものです。
自分と異なる意見は必ずあると思います。しかし違うと思うその意見にも発した人がその人なりにそう思う理由というものが必ずあるはずです。
哲学カフェはものごとの本質を考えるとても良い機会です。一見別の意見であるように見えても実は本質的に同じことが隠れていたりするものです。
オンライン診療においてもこの「相手の意見を全否定しない」という考えを重視しなければならないと思っています。
例えば私は糖質制限推進派の医師ですが、
仮に患者さんが菜食主義を希望された場合、頭ごなしにその意見を否定するのではなく、
その患者さんがなぜそれを希望するに至ったのかについてまずは理解しようと努める必要があります。
そして自分がそれについてどう思うかについて患者さんに伝え、患者さんと対話することで互いが納得する所まで到達しなければならないと思っています。
ここで私がなすべきことは相手に糖質制限を行ってもらうよう説得することではなく、
相手が納得する治療に到達してもらうということです。そのための対話をオンライン診療で行うべきだと思っています。
仮にもしも対話の結果で患者さんが菜食主義をそのまま選択したとしても、私はそれを支えるドクターであり続けなければならないと思います。
それが患者さんの望む治療である限りです。
事実菜食主義でも健康を保っている人は実在しているわけですから、そこには腸内細菌が菜食に適合しエネルギーを生み出すシステムがあるのかもしれないですし、
はたまた未知のメカニズムが存在しているのかもしれません。
患者さんの体調がよければ私は私の中の常識を疑いつつ患者さんをサポートしていく必要があります。
ただし、もしも患者さんの体調が悪くなっていくのに、それでも患者さんが菜食主義を頑なに希望し続ける場合は、
それに対しては見直してもらえるよう対話をし続ける努力をする必要が私にはあると思います。
それで方針が変わらなかったとしてもです。患者さんが私を必要としてくれている限りです。
オンライン診療においてベースとなる対話は、そういう意味で非常に重要な役割を果たすと私は思います。
でもオンライン診療ということでここまで書いてきましたが、
これは何もオンライン診療に限ったことではなく、
診療全般において言えることなのかもしれません。
たがしゅう