触らずに得られる情報の獲得技術を鍛える

もうすぐ私のメインの診療フィールドはオンライン診療になるのかと思いながら、

日々の対面診療をこなしているたがしゅうです。

私は漢方薬を診療によく使う医師なので、

漢方診療での診察方法のひとつ、「腹診(ふくしん)」という手法を頻繁に行います。

これは患者さんに足を伸ばして仰向けの姿勢になってもらい、

お腹の様々な部位に触れて患者さんの様々な情報を読み取る技術です。

西洋医学的な腹部診察と似ていますが、得られる情報の種類がかなり異なります。

漢方薬を使わない医師が行う西洋医学的な腹部診察では、膝を曲げた状態で仰向けとなり、

主には痛みの有無や腸の蠕動音、異常構造を触れるかどうかなど診るわけですが、

漢方での腹診は、筋肉の緊張や身体の冷えの有無、微小血管障害から水分の淀みまで、得られる情報は多岐に渡ります。

中でも私が腹診で最も意識して診る情報は「ストレスのかかり具合」です。

ストレスがかかり続けている人は横隔膜や腹直筋が緊張していたり、微小循環が詰まりやすい特定の部位で圧痛を生じたりします。

慢性疾患の治療には、このストレスに関する情報が極めて重要です。なぜならばストレスなどないと自覚している患者でも、

腹診でストレス反応が認められれば、そこは無自覚のストレスがあるものとして漢方薬を選択していく必要がある、ということになるからです。

オンライン診療ということになると、この重要な情報源である腹診が使えない、ということになりますので、

触って患者さんを診ているうちはいいですが、オンライン診療に切り替わった時に一気に私の診療の質が落ちる可能性が出てきます。

ですので、まだオンライン診療ではない対面診察のうちから、腹診に頼らずにストレス反応の有無を見抜く努力をする必要があります。

対面診察時腹診はあくまでその確認作業、答え合わせとして行うようにしなければなりません。

腹診を行わずに患者のストレス反応の有無を見抜くには、例えば患者の表情、声のふるえ、ぎこちなさ、わずかな頭・手のふるえなど視覚・聴覚情報からの情報に集中する必要があります。

そしてそのトレーニングは対面診療にもそのまま役に立つ技術の獲得へと向かわせてくれるように思います。

同じ日々の診療でも、その事を意識するかどうかによって、

診療技術の質の高まり方が変わることに、今更ながらに気付いた次第です。

たがしゅう

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