オンライン診療を永続的なストックビジネスにしない

高血圧に特化したオンライン診療が自由診療で受けられるサービスが始まるとのニュースが流れてきました。

一般社団法人テレメディーズは,2019年5月15日より国内初の高血圧オンライン診療支援サービス「テレメディーズ® BP」の提供をスタートする。「自宅で受診でき,降圧薬も郵送で受け取れる」“もっと続けやすい”“もっと確実な”高血圧診療の実現を目的としたサービス。

https://www.innervision.co.jp/sp/products/release/20190626

記事によりますと、初診のみ厚生労働省の 指針に基づいたオンライン診療を提供する医療機関での対面診療が必要ですが、

それ以後は全国どこからでもオンライン診療を利用し続けることができるというサービスが月額4600円~で利用できるという仕組みのようです。

保険診療でのオンライン診療の制限を打破すべく生み出されたサービスで、私が目指すオンライン診療と自由診療で行うという点では共通しているのですが、

ビジネスモデルがこの高血圧オンライン診療サービスと私が考えるオンライン診療クリニックとでかなり違っているように思います。

その違いを説明するのに、フロービジネスとストックビジネスという言葉を利用したいと思います。

フロービジネスの「フロー」とは「流れ」の意で、フロービジネスというのは客との関係が1回切りで完結するビジネスのことで、

ストックビジネスの「ストック」は「蓄積」、ストックビジネスとは客と契約を結ぶことで「顧客」となり、持続的な関係を結んで行われるビジネスのことを指します。

高血圧オンライン診療サービスの方は「永続的ストックビジネス」のスタイルとなっていると思います。

というよりも、現代医療の仕組みそのものが「永続的ストックビジネス」です。外傷や感染症など一過性のものを除いて、慢性疾患に対しては死ぬまで薬を飲み続ける羽目になることがほとんどです。

それでも仕方がないと、薬を飲み続けないと余計に体調が悪くなると多くの方々は思いこみ、病院への永続的な通院を続けておられます。

今回の高血圧オンライン診療のサービスは、そのビジネスモデルに準じたオンラインサービスだと言えると思います。

勘違いして欲しくないのは、私はこのサービスをとりわけ批判したいというわけではありません。ただ私がオンライン診療を通じて行いたいことは、そういうこととは違うということです。

私は医療に主体性を持ち込み、慢性疾患からの卒業を目標におき、その目標達成を支えるためのサービスをオンライン診療で展開するつもりです。

すなわちフロービジネスとストックビジネスの中間のビジネスだということです。

顧客、ここでは私のクリニックを利用される患者さんとは1回切りの関係ではありませんが、必ず終了を目指して診療を行う所が決定的に違う所です。

ただオンライン診療で漫然と降圧剤を処方し続けるというのではなく、

糖質制限を中心とした食事療法とストレスマネジメント指導を行いつつ、降圧剤は出しつつも徐々に減量し、最終的には自分の力だけで血圧がコントロールできるようにしていくようにしたいのです。

勿論、主体的医療なので患者さんが降圧剤を出し続けてほしいと要望し、私との対話の中でもその見解が変わらない場合は、私も降圧剤を出し続ける行動はとり得ますが、

永続的な顧客としては患者さんをみなしません。たとえ、自分のクリニック経営が不安定になるとしてもです。

なぜならば、慢性疾患からの卒業サポート、それこそが私が医師として本当にやりたいことであるからです。

ですので、「細かいことはいいからとにかく薬をオンラインで出してくれ」という患者さんにとっては私は同じオンライン診療医でも煩わしい存在に映ることと思いますが、

それでも私の理念に共鳴して私の方のオンライン診療を利用されるという患者さんは必ずいると信じています。

その患者さんの主体性を十分にサポートできるように私は努力を続けたいと思います。

たがしゅう