オンライン診療ではできない治療

階段から足を滑らせて尻もちをついてお尻を強打したというとある患者さんがいました。

座ったり立ったり姿勢を変える度にお尻に激痛が走るというのでどうしたらいいか相談されましたが、

これは尾骨骨折が疑われるので整形外科で診てもらった方がいいとアドバイスし紹介状を書く流れとなりました。

ここでふと思いました。もしこれがオンライン診療での相談であったとしたらどうだろうかと。

おそらく私はなす術もなく、やはり同様に整形外科を受診するように勧めたのではないかと想像します。

痛み止めを郵送してもよいわけですが、家に届くまでに数日間かかるわけですからそれが来るまで我慢して待つわけにもいきません。

それだったら素直に整形外科を受診して痛み止めを処方してもらったり、骨折の部位によってはギプスやシーネ固定、あるいは手術などの処置を受けた方が利益は大きいはずです。

つまりオンライン診療では絶対的不向きな病態というものがあるということです。

このケースから学ぶ「オンライン診療での対応を難しくする要素」とは何でしょうか。それは大きく二つあるように思います。

一つは「(超)急性期の病態」。もう一つは「直接触れないと対処困難な病態」です。

やはり超急性期の病態に対しては西洋医学がもたらした恩恵はかなり大きいと私は考えています。西洋医学的な救急医療でしか解決できない病態はたくさんあります。脳卒中しかり、心筋梗塞しかりです。

血管が詰まっているのに悠長に漢方薬を飲ませている場合ではありません。こういう場合は救急車を呼ぶのが最適な選択です。

逆に言えば「慢性期の病態」そして「直接触れなくても対処できる病態」はオンライン診療に向いているという事になります。

なぜならば刻一刻を争う病態ではなく、むしろ長年の未解決問題の積み重ねによってもつれにもつれてしまった複雑な病態を時間をかけて解きほぐしていく必要があるからです。

だからオンライン診療と従来型の病院医療はそれぞれが得意とするフィールドが異なっているのであって、互いの特徴を踏まえつつ共存していく形がよいのだと私は思います。

そしてそれらのシステムを利用する側の患者が、何も考えずに病院を受診するのではなく、急性期の病態はとりあえずの火消し作業のために病院を受診し、

こじれてしまった慢性期の病態ならオンライン診療を選んでゆっくり時間をかけて解きほぐしていく、というように状況に応じて自分が受ける医療を選んでいくべきと思います。

しかし現時点では「こじれた病態も病院で丁寧に診てもらえばよい」と思われることと思います。

けれど現在の病院医療システムでは丁寧に診てもらうことはほぼ困難ですし、用いる治療手段も慢性期医療に向いていない西洋薬中心であり、残念ながらおそらく患者さんの希望を満たすことは難しいでしょう。

そういう状況の中で、私の方法論であれば慢性期病態を治すことができるという実績を示していく必要があると感じています。

そうすればオンライン診療の未来が開けていくのではないかと、そんなことを考えるきっかけとなりました。

たがしゅう