自由診療のオンライン診療医になると私が決めたわけ(前編)

とある方から頂いた「なぜオンライン診療を始められようと思ったのですか?」という質問の中で、

「どなたか先輩医師に誘われるようなことがあったのですか?」と尋ねられる場面がありました。

私は誰かの真似をしてオンライン診療をやろうと思ったわけではありません。振り返ってみれば、そう決断するに至る必然的な流れがありました。

全ての始まりは私が糖質制限と出会ったことにありました。いや、もしかしたら糖質制限と出会う前の負の時代も今へとつながる布石だったのかもしれません。

私は糖質制限により自分の身体にもたらされた絶大的な体調改善効果を経験して、

また糖質制限を指導し実践した患者さんにおいて劇的に病状が改善するという現実を目の当たりにして、

現代医療において標準的とされるやり方に次第に疑問を抱くようになりました。

その後、私は糖質制限以外にも標準的ではないとされる医療の中に確かな効果をもたらしているものがある事実も知るようになり、

しかしながらそのいずれもが科学の名の下にまがいものと扱われている状況も理解するようになりました。

一方で科学的で標準的とされる医療がもたらしている現実はといえば、短期的にはともかく、長いスパンで眺めた時に利益どころか害悪をもたらしている事実があることもわかりました。

その理解を経て、糖質制限制限をはじめ、確かに効果をもたらす医療を提供しようと試みても何故かうまくいかない壁に突き当たる経験をしました。

そうした自分の中にある疑問や感じた思いなどを少しずつ書き綴ってみようと思い立ち、ブログを始めたのが今から約6年前のことです。

地道に記事を書きためていくことで、有り難いことに全国各地にいる読者という理解者の皆さんとつながることができるようになっていきました。

その後も糖質制限医療の推進を試みるも、次第に私はうまくいかない原因が患者の主体性を失わせる、医療を提供する構造そのものにあることに気がつき始めました。

このまま枠にはまった医療を続けていくべきではないと感じ、開業という考えが頭の中を巡り始めましたが、

医者の仕事をこなすことしか学んでこなかった私には経営者としてお金をやりくりしたり、従業員を雇って全体をマネジメントするという行為にどうも自信が持てませんでした。

またその「お金をやりくりする」という目標を守ろうとすればするほど、従来型医療のルールに従うより他にない現実に目がいくようにもなり、

国民皆保険での保険医療制度の問題も認識するようになりました。

そのような問題が次々と明らかになっていく中で、有り難いことにブログの影響で私の理念に共鳴した患者さんが、遠方からはるばる私の下へ受診しに来て下さるケースがポツポツと見受けられるようになってきました。

わざわざ長い時間と高い交通費をかけて受診して下さるその想いに私はありがたさを感じる反面、それに見合った医療を提供しきれない申し訳なさでいっぱいの気持ちとなりました。

オンライン診療に出会ったのはそんな頃でした。はじめははっきり言って私はオンライン診療に全然乗り気ではありませんでした。

点滴が出来ない、検査が出来ない、なんと言っても患者に触れることができない、

ちょっと考えれば対面診療の劣化版としか思えない診療形式では、いくら遠方の患者を診ることができたとしても中途半端な医療となってしまうのではないか、最初はそんな印象でした。

ところが同時に患者の主体性を奪う医療構造に問題意識を持っていた私は、ある時治療の主導権が医療者側から患者に移った時に、

このオンライン診療は非常に使えるツールになるのではないかという考えが浮かびました。

糖質制限だけとってみても、糖質制限の理解のある医師の指導の下で糖質制限を実践したいと患者が主体的に決めたとしても、

それを指導できる医師は、ガイドラインによる糖質制限非推奨を均一的に推進してしまう背景も手伝って、なかなか身近に存在しないというのが現状です。

なので患者さん達は糖質制限推進派医師のブログやFacebookなどのSNSツールに一度も出会ったことのないにも関わらず、自分の身の上相談をする形で、その不満が表面化しているという現実もあると思います。

確かに不完全かもしれないけれど、オンライン診療という道筋ができることで、患者さんには標準とされる医療以外の選択肢が一つ手に入ることになります。

あとはその選択肢をとるかどうかを患者さん自身に選んでもらえばいいのです。

オンライン診療が不完全かどうかは私が決めなくてよい、患者さんに決めてもらえばよいのです。

私は対面だろうとオンラインだろうと患者さんが最大限の利益を得るための方法を、それぞれのプラットフォームで熟考し実行していくだけの話です。

(後編へ続く)

たがしゅう