オンライン診療と訪問診療は一見真逆に医療のように思えますが、
実は訪問診療の世界でもオンライン診療は有効活用されつつあるようで、
例えば夜間に在宅の患者さんが調子を崩した時などに、
臨時で駆け付けた訪問看護師が医師の指示を仰ぐときに現場の状況を正確に伝えたいと思う時に、
自宅にいる医師とオンラインビデオ通話でつないで患者さんの様子を遠方にいながらにして視覚的に確認する、といった使い方がなされているそうです。
こうして見ていますと、真逆のように見えるオンライン診療と訪問診療、
実は共通点があるということに気が付きます。
それは「患者さんのことをより深く知るための情報を得やすい」ということです。
もう少し具体的に言えば、生活の場がどんな所かということがわかるということです。
わざわざ病院に来てくれる患者さんは、対面診療の診察の場においては言わばよそ行きの状態を医師に見せます。
文字通りおしゃれやお化粧など外見を着飾るという意味のよそ行きだけではなくて、
心理的にも医師に相対するという意味で、いわばアウェイに出向く感覚があるために緊張するということもあるでしょう。
例えば、白衣高血圧という自宅では高くない血圧が診察室でのみ上昇するという現象があることはよく知られています。
あるいは普段糖尿病で暴飲暴食をしていたとしても怒られたくないから、食事を抜いて血糖値が上がらないように心がける、というのもよそ行きの態度の一つでしょう。
ともかく病院で診る患者さんは、その患者さんの素顔とは程遠い状態にあるということを認識しているかどうかで診療の仕方もだいぶ変わってくると思います。
その点、訪問診療であればアウェイではなく、文字通りホームで診察を受けることができるので、
同じ診察や同じ治療を受けるのでも患者さんの心の在り方はだいぶ安心へと傾くのではないかと思います。
オンライン診療においてもその要素はあって、患者さんが診察を受ける場は自宅かもしくは自分が診察を受けてもよいと選んだ場所になりますので、
患者さんの普段の生活状況を映像から垣間見ることができる可能性が出てきます。
もし何も見えない白色バックの場所で診察されていたとしても、
アウェイで診察するよりも患者さんの心理的な負担感は軽いでしょうし、パーソナルスペースを侵害されないという長所もあります。
もっと言えば信頼関係を構築することができれば、背景映像に映っていない部分で医師が「〇〇(場所名)を見せてもらってもいいですか?」という注文に応じてくれる可能性もあると思います。
そうなればより患者さんのベースの部分を形づくる情報を集めることができるので、
病気の根本原因にも迫りやすくなるし、患者さんとの信頼関係も築きやすくなるという側面が、
訪問診療とオンライン診療には共通してあるのではないかと私は思います。
たがしゅう
褥瘡患者さんの、実際に生活しているベッド周りを見てみたいと思うことは多々あります。
窓やテレビの位置、介助者がどちらからアプローチしているか。
などなど、褥瘡の原因が予測できる場合があるからです。
訪問の看護師に、部屋の様子や本人のベッド上での写真を撮ってきてもらったこともあります。
テレビ電話のようにパソコンに様子が映れば、
実は、外来の診察室よりも、もっと的確に治療のアドバイスができると私は思います。
たかはし 先生
コメント頂き有難うございます。
そうですね。実際の生活状況は言わば病気の下地を作っている可能性のある重要情報です。その重要情報を手に入れるのは訪問でもオンラインでも可能ですが、診察室では途端に難しくなると私は思います。