オンライン診療の2大欠点に「救急対応ができない」に並んで、「検査が行えない」というのがありました。
検査が行えないというのは確かにデメリットではあるのですが、
ここは考え方次第だと私は感じています。
現代医療は検査絶対主義が、国民の無意識レベルにまで浸透しきっている風に私は感じている所ですが、
実はそもそも検査がなかった方が最適な判断ができていたかもしれない状況で、
検査の値によってミスリードされてしまっている状況も多々あるように私は感じている所です。
例えば、漢方薬の有名な副作用に偽性アルドステロン症というものがあります。
これは百種類以上の保険収載されている漢方薬の中で最も配合頻度の高い甘草(カンゾウ)という生薬による副作用とされていて、
そのメカニズムは簡単に言うと、甘草の主成分であるグリチルリチンが、
ストレスホルモンの指令系統を強制的に駆動させるような薬理学的な機序を通じて、
結果的にはストレスホルモンの一つであるコルチゾールを過度に増加させ、同じくストレスホルモンの一つであるアルドステロンの受容体までも合わせて刺激してしまうがために、
アルドステロンが増えたわけでもないのに、アルドステロンが増え過ぎて起こる検査値異常が起こって来るという副作用のことをいいます。
その検査値異常の代表的なものが高ナトリウム血症と低カリウム血症なので、
甘草が含まれる漢方薬を長く服用している人は定期的に血液検査でチェックをしようというのが、漢方医の中では基本とされている診療姿勢となります。
なので漢方薬を飲んでいて調子が良いという人に、たまたま血液検査を行って高ナトリウム血症や低カリウム血症などの検査異常が見つかった場合は、
医師としては漢方薬の服用を止めることを進言しなければならないと、オンライン診療ではそういった進言ができないという事になります。
ただ、ここで一つ思います。漢方薬で知らず知らずのうちに高ナトリウム血症や低カリウム血症の検査値異常をきたしていたとして、
本人が体調が良いという場合に、その漢方薬は本当に止めなければならないのでしょうか。
私は以前、甘草を含む漢方薬を長期服用していて偽性アルドステロン症を認めたけれど、臨床的に大きな問題がなかったのでそのまま経過をみていたら検査値異常が改善していったというケースを経験したことがあります。
偽性アルドステロン症は医学界の常識では忌避すべき副作用と認識されてはいますが、
そのメカニズムを考えれば、漢方薬の生薬の力でストレス応答系のサポートをしている状況だとも考えられないでしょうか。
そのストレス応答系がスムーズに着地しきれていないという状況だとは思いますが、
偽性アルドステロン症の検査値異常があったからと言ってすぐさま漢方薬を止めるべしという判断は早計だと思います。
あくまでも患者の体調が崩れている時に漢方薬の服用中止を進言すべきであって、
検査値異常を見て患者の異常を診ない診療だと本末転倒となってしまうと私は思います。
そのように患者の異常の有無で薬の服用を中止すべきかを判断するという診療行為であれば、
オンライン診療でも十分実践可能なのではないかと私は考える次第です。
たがしゅう