薬物療法は患者から主体性を奪う

現代医療の在り方がよく「3分診療」だとか「5分診療」などと揶揄される場面があるかと思えば、

人気のあるクリニックでは予約3ヵ月待ちで繁盛しているなどと言う話を耳にすることがあります。

限られた時間の中で多くの患者さんを診察し治療するという事を可能にしている最大の要因は、「薬」という治療方法だと私は思います。

なぜならば、薬を処方するまでのプロセスが複雑であろうとなかろうと、処方するまでの時間が長かろうと短ろうと、

とにかく薬さえ出せば治療が成立してしまうからです。

これはたくさん、高回転で薬を出している医師がきちんと考えずに出しているという事を批判したいのではありません。

ものすごく頭の良い医師やベテランで経験豊富な医師であれば短時間で最も適切な処方を選択するということは不可能ではないと思います。

ただこの薬を処方するという行動、その手軽さ故に別の問題点を生んでいる側面があります。

それには患者側の基本的に「先生にお任せする」という価値観が深く関わっています。

すなわち手軽であるが故に、患者側も難しいことを考えなくとも、ただ薬を飲めばよい、という意識が働いて、

主体的に問題意識のある人でない限り、受動的なスタンスで医療を受ける人はまず自分の治療方法がどういうものであるかということを調べて理解しようというモチベーションが働きにくいということです。

つまり大雑把に言ってしまうと、薬ベースの治療体系そのものが、

医療から患者の主体性を奪っているということもできるのかもしれません。

だからオンライン診療では糖質制限とストレスマネジメントという、自らが主体的に動かない限り治療効果が得られないという治療法が基本となりますが、

オンライン診療で郵送などで投薬を行うということは、せっかくの主体性が育ちやすいオンライン診療環境なのに、

結局言われた通りにただ薬を飲むだけという形で主体性を削いでしまうことになりかねません。

従って、オンライン診療において投薬を希望する患者さんは、

自分が飲んでいる薬の目的が何で、どういう内容のもので、どういう副作用リスクがあるのかといった情報について、

自ら聞いて調べて理解するというスタンスがなければ従来の対面診療と大差ない、もしくはそれよりも質の低い医療ということになりかねません。

自らが薬について理解し、それを希望するのかどうかを自分の中で確かめる作業があるからこそ、

自分の希望の沿う治療であるかどうか、あるいはストレスフリーで治療が受けられるかどうか、さらには何か思っていたのと違うという事がわかった時点で軌道修正できるかどうかの判断ができてくるのだと思います。

これはよく考えれば、対面診療でもきっと同じことです。

今対面診療で薬を飲んでいる人も、

ただ出された薬を先生の言われるがままに飲むのではなく、

自分の薬について調べて納得するようにすれば、

今でも主体的医療に近づくことは可能だと思います。

ただし現時点ではまだそうした患者側の薬についての決断を受け入れる医師が少ないかもしれません。

たとえ主体性を持って自分が思う治療方針を提示したとしても、

それを受ける医師側に「治療は医師が決めるもの」の認識だとせっかくの主体性がつぶされてしまいます。

多様な価値観を受け入れられるように、

患者も医師も変わっていく必要があると感じています。

たがしゅう

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