湿潤治療のオンライン診療

オンライン診療は使い方によって様々な可能性があると思います。

一つ、私が考えているのは「湿潤治療の治療アドバイス窓口」です。

「湿潤治療」というのは、形成外科医で私の医師としての師匠でもある夏井睦(なつい まこと)先生が考案された、

消毒やガーゼといった実は傷の治りを阻害する因子を最小化し、最も傷が治りやすい潤った環境を傷を覆う材料を工夫することでキープし、

それによって痛みを最小化し、かつ傷が治るスピードを最速にするという画期的な傷の治療法のことをいいます。

詳しくは夏井先生が運営するインターネットサイト「新しい創傷治療(http://www.wound-treatment.jp)」を見て頂ければと思いますが、

この湿潤治療、今書きましたように治療原理としては大変シンプルであるため、

自宅でも工夫次第で十分実践可能な治療法です。

この治療法の最も意義深いことの一つとして、こどものやけどの問題があります。

一般的には小さなこどもが大きなやけどを負ってしまった場合、

何も考えなければ近所の皮膚科や大きな総合病院を受診されるのではないかと思います。

ところがそのように受診すると多くの場合、湿潤治療ではなくガーゼや傷に固着する被覆剤、

あるいは昔から根拠も乏しいのにやけどに効くとされているも実は界面活性剤の成分などにより傷を障害することがわかった軟膏が塗られたりして、

理不尽にも痛いわ、なかなか治らないわで大変拷問的な治療が続けられるという実情があります。信じられないかもしれませんが、本当です。

その結果、そのやけどの子が勧められるのは多くの場合「植皮」という手術です。

植皮とは要するに治らないやけどに対して、別の場所から健康な皮膚を取ってきて貼り付ける手術です。

これ実は、植皮された皮膚がうまく生着したとしても網目状で目立つ傷跡が残ります。

しかも元々綺麗だった健康な皮膚を取り出した部分にも新たな傷跡が残ることになるので二重の苦しみです。

実は最初から湿潤治療をしていれば、そんな苦しい手術を受けずとも、痛くなく綺麗にやけどが治るということは、

前述の夏井先生のサイトで豊富な症例とその実際の写真とともにすでに実証されています。

つまり湿潤治療を知る医者に当たるか当たらないかでやけどを負ったこどもの運命が大きく変わってしまうということです。

そのため運良くネット検索などで湿潤治療の存在を知ったやけどの子の親御さん達が、

全国各地から東京にいる夏井先生のクリニックにわざわざ遠路はるばる受診されるという話も稀ではありません。

そんな状況ですが、もし私がオンライン診療でやけどを負った子とその親御さんに初期からアプローチすることができれば、

実際に夏井先生に治療してもらうよりは精度が落ちるかもしれませんが、

自宅での応急処置として湿潤治療を行うにはどうすればよいかをビデオ通話を通じて教えてあげられるかもしれません。

このシステムが普及すれば、東京まで行けない事情の方にも湿潤治療の恩恵を届けうるのではないかと考える次第です。

ただその為にはまず、「オンライン診療で湿潤治療のアドバイスをやっている」ということを広くいろいろな人に知ってもらう必要がありますので、

そのためにYouTubeで簡単な解説動画を作る、さらにそれをSNSで色々な方に拡散してもらうという戦略は有益なのではないかと考えています。

たがしゅう

「湿潤治療のオンライン診療」への2件のフィードバック

  1. たかはしです。

    おっしゃる通り、患部の様子を写真や動画でみせてもらえば、オンライン診療が可能でしょう。
    また、私の場合は、褥瘡の治療もできそうかもと、考えていました。
    というのも、通常の外来でも、診察室でアドバイスはしますが、
    実際ケアをするのは、現場の家族であったり、施設職員であったり。
    つまり、私は知恵を伝授しているだけ。
    写真や動画の画像がよくなっているので、実際の視診とそんなに、変わらないです。
    ただし、硬結浮腫などの、触診でわかることが、現場で触っているひとと、
    どうやって、言葉で説明しあえるかという問題が、ひっかかってます。

    • たかはし 先生

      コメント頂き有難うございます。

      遠隔は実際に触れるに劣る、それは動かしがたい事実です。
      もちろん欠点はあるのだけれども、その欠点を補って余るほどのメリットをオンライン診療はもたらしうるということ、
      その上でその欠点がある状況で、どうすれば最適の活用方法となるかの方法論について、試行錯誤を繰り返しながら模索していければと考えております。

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