オンライン診療ガイドラインについて学ぶ

「オンライン診療」と似た言葉に「遠隔医療」というものがあります。

というよりも、もともとは「遠隔医療」という名称で、インターネットを通じた遠距離間での診療の話は医療者の間では認識されていたのですが、

平成30年4月の遠隔医療に関する制度改正に伴い、「オンライン診療」という呼称が新しく生み出され、整理されてきたという経緯があります。

概念的には「遠隔医療」という大きな枠組みの中に、「オンライン診療」というものが含まれるという構造になっています。それぞれの言葉の正確な定義を確認しておきましょう。

「遠隔医療」
情報通信機器を活用した健康増進・医療に関する行為

「オンライン診療」
『遠隔医療』のうち、医師患者間において情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムにより行う行為

これらはいずれも厚生労働省が平成30年3月30日に公表した「オンライン診療」のガイドライン(正式名称:「オンライン診療の適切な実施に関する指針」)に記載されている定義となります。

このガイドラインは、保険診療・自由診療の違いを問わず、「オンライン診療」全体の秩序を守るために遵守すべきルールとして推奨されているものです。

「遠隔医療」の方が漠然とした概念で、「オンライン診療」がそれよりも細かく定められているという感じですね。

そしてもう一つガイドラインに定義が書かれている言葉に「オンライン受診勧奨」というものがあります。

「オンライン受診勧奨」
遠隔医療のうち、情報通信機器を通して患者の診察を行い、医療機関への受診勧奨をリアルタイムに行う行為。
患者の状態に応じた医学的な判断を伴わない一般的な受診勧奨については、『遠隔健康医療相談』として実施することができるが、り患している旨を伝達すること、一般用医薬品の具体的な使用を指示すること、処方等を行うことなどは行ってはならない。

こちらは同じ情報通信機器を用いても、「オンライン診療」のように診断して治療するステップまで持っていくのではなく、あくまでも話を聞いて(これがオンライン診療における「診察」となるわけですが)、その人が直接病院へ受診した方がよいかどうかを判断するという作業、これが「オンライン受診勧奨」ということになります。

例えば、オンラインで話を聞いて、「あなたは呼吸器感染症にかかっている(り患している)と思うから病院に受診した方がよい」と説明したりするのが「オンライン受診勧奨」の一例ということになるでしょうか。

ところがその後に記載してある「遠隔健康医療相談」ともなると、さらにできる事が限られて、話を聞いてとにかく病院へ受診した方がよいかどうかを伝えるだけで、何の病気にかかっていると思うという医学的判断を伝えてはならないことに加えて、

この薬を飲んだ方がよいと思うという助言や、今飲んでいる薬の飲み方をこう変えた方がいいというアドバイスを送ることもできないという非常に幅の狭い医療行為ということになります。

さて、今の言葉の定義を眺めても一端が見えると思いますが、このガイドラインでは「オンライン診療」を行うに当たってはとにかく適切に病院での対面医療へとつなげること、すなわち「オンライン診療はあくまでも対面診療のサポート的存在であるべき」という考え方が繰り返し強調されています。

完全遠隔で行って何かトラブルが現れた場合は医師としての責任がとれないわけだから、そんな無責任な医療はくれぐれもやらないように、ということなのだと思います。確かに一理ある意見です。

ただそんな中でも例外的に初診からでも完全オンライン診療がガイドライン上でも認められている分野があります。それは「禁煙外来」です。

なぜ禁煙外来では完全オンライン診療が認められているのかと言えば、端的に言って「リスクが低いから」。要するに禁煙外来の治療というのは患者教育であったり、カウンセリングであったり、

もともと有害なニコチンを大量に吸っている所に少量で徐放化したニコチン代替薬を使いながら徐々にニコチン依存状態から離脱するのを目指すという治療ですから、

それによる有害事象というのは考えにくいわけですし、治療が失敗し再喫煙したとしても、もともとの高リスク状態に戻っただけですし、自己責任ですし。

さらに治療過程で急病に侵されたとしても、禁煙外来での治療行為が関係しているとは考えにくいので(無関係とまでは言い切れないかもしれませんが)、完全オンラインが認められているということなのでしょう。

今の所、自由診療であっても、このガイドライン上で完全オンラインで認められているのはこういったケースのみです。

ということは現状、完全オンラインでの診療を行うためにはリスクの低い治療を選択しなければならないということになります。

食事療法指導やストレスマネジメント指導はおそらくこの条件をクリアできると思います。ところが私が漢方薬を処方するとなると、このリスクの低い治療という所に引っかかってくる可能性があります。

私は西洋薬に比べたら漢方薬は、使い方にさえ注意していればリスクの低い治療だと考えていますが、このあたりは検討の余地ありかもしれません。

しかしオンライン診療を適切に普及させるためにルールを守るということも大切なことです。一方で薬が処方できないとなると患者さんの満足度が低下する可能性も高いように思います。この辺りは良い落としどころを今後も模索していく必要性を感じます。

ちなみにこのガイドラインは情報通信機器や周囲環境の変化が速い状況を受けて、1年毎に改訂が施される予定となっています。

今後の動向も注意深く見守っていきたいと思います。

たがしゅう

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