オンライン診療での通院負担軽減について

オンライン診療を保険診療で行う場合に、

「オンライン診療料」として国民が捻出した保険料の中から医療機関がお金を請求することができるための条件が定められました。

その条件の中に「緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制をもっていること」というのがあることが物議を醸しました。

なぜならば30分以内に救急受診できるような人は、そもそもオンライン診療を利用する必要性がないからです。

なぜこんなヘンテコな要件が加えられているのかについて厚生労働省は、「オンライン診療は日常診療で用いるべきというコンセプトがあるから」という趣旨の返答をしています。

その後の疑義照会によって、厳密に30分以内に受診できる人でなくとも、

「日常的に通院・訪問による診療が可能な患者を対象とするものであればよい」と明示されることになりましたが、

これだと結局オンライン診療のメリットが「通院の手間が少し省ける」という程度のことに留まってしまうように思います。

しかも条件の中には、「3回に1回は対面診療を挟まなければならない」というものもあるので、

その通院の手間が省けるメリットでさえ、限定的なものになるという始末です。

オンライン診療は患者の交通費負担を減らすことができます。

医学的なことは一旦置いておくとして、これは定期的に通院する患者にとって通院期間が長ければ長いほど魅力的なメリットとなるはずですが、

これが医療者側の事情で非常に限定されるというわけですから、

患者主体の医療はどこへやらという気がいたします。

勿論、何か問題があったらどうするんだと心配する気持ちはわかります。

しかし医師が患者のすべてを管理しなければならないという発想の下にオンライン診療を考えると、

結果的に患者の自由を次から次へと奪うことへとつながり、

オンライン診療を利用するのは通院が面倒だというごく一部の患者や、限定的だとしても構わないから通院負担軽減を希望する妥協した特殊事情の患者など、

風変わりな医療オプションという域を出ません。

だから医師に責任を持たせるのではなく、利用する患者に責任を持たせる逆転の発想を行えば、

オンライン診療の「何か起こったらどうする」問題は、大きく様相を変えるのではないかと私は思います。

 

たがしゅう